説明会とOB訪問の予定で黒く塗り潰された手帳
]君/都内私大 博報堂内定

  多くの業界の説明会とOB訪問に足を運んだというX君。
  マスコミ一本に絞るのとどちらがよいかは意見の分かれるところだろうが、
  彼の場合は、その上でやはり広告が第一志望だと確認したという。



第一志望の博報堂から内定の電話

 「うちとしては是非○○君と一緒に働きたいと思っています。おめでとう、内定です」

 第一志望である博報堂の人事の方にその言葉をいただいた時に、自分の中に沸いた感情は不思議なものだった。内定はあくまでスタートだと言われることが多いが、就職活動という人生の大きな一つの局面で言えば、それはゴールだと思う。そこに最上の形で到達したはずであった。だが、今冷静に振り返ってみると、就職活動を通して、恐らく無意識に自分がジワジワと成長しているのを感じていた私は、就職活動が比較的早い時期に終わってしまったことに少し物足りなさを感じていた。

 自分という人間の、考え方や話し方全てをひっくるめた人間力が、今現在日本の基幹を支えながらその企業の最前線で働く方々からどのような評価をいただけるのか。面接を通して自分自身をもっとおもいっきりぶつけてみたいという気持ちが生み出した、この物足りなさ。就職活動とは、自らの人間力が問われるものであると同時に、社会という場において自らをこの上なく成長させてくれる絶好の機会であることを、まずしっかりと認識していただきたい。

 これから就職活動をする学生に一つ考えてみてほしいことがある。例えば今年の内定者と同じエントリーシートで同じ面接官に対して同じ答えをしたならば、あなたは同じように内定がいただけると思うだろうか?

 おそらくその答えはNOであろう。書かれている中身がしっかりしたものであることはもちろんだが、決め手はその人の話し方や考え方などの人間力が見られているということなのだと思う。

 要は、自分の企業の現場で戦え、仕事ができるという人間力が見られているのだと思う。OBの方も「学生が書いてくることはほとんど変わりはない。そりゃ最低限は必要だけど、エントリーシートなんか全然見ない面接官がいるようにそこから先は人だよ」とおっしゃっていた。

 その人間力を身につけていくうえで、私はテレビやOB訪問、説明会での有名人や社員の方の、話の中身だけでなく話し方や考え方を観察するようになった。世間から定評を得ている人の話し方はなぜ人に説得力を持つのか、現在最前線でバリバリ仕事をしている方々はなぜそこで活躍出来るのか。この観察を意識してから驚くほど発見があった。ただしそれをマネはしないように気をつけた。自己分析をしっかりした上で、その自分に吸収させた。これは特に、グループワークやグループディスカッションなどの集団の中で違いを出すことにつながったと思う。


ほぼ全業界の説明会に参加し、OB訪問した

 広告はもちろん、テレビ、新聞、出版、商社、不動産、通信、携帯電話、SE、印刷、銀行などほとんど全ての業界の説明会に参加し、OB訪問した。それは、特に2月から3月にかけて真っ黒に塗りつぶされ、予定で埋め尽くされた手帳が証明している。よく「マスコミしか受けていない」という学生がいるが、本当にそれでいいのだろうか。それは自分という人間がマスコミという限られた業界でしか輝けないと、自身の可能性を非常に狭めているだけではないのか。私自身、実際に現場で働くまではどれだけ話を聞き調べても、そのギャップは埋まりきらないとは思う。それでも時間がないなどと言い訳せずに足を使って得た経験から、いろいろな業界を見てきて魅力的なものも多かったが、やはり第一志望は広告だと再確認出来たのが最終的に自分の強みになったと感じる。

 そのOB訪問で私は一つ工夫をした。ありきたりな質問の答えはHPや資料に載っている。とりあえずOB訪問はしたという形に満足するのではなく、最大限有意義なものにするためにあえて「差し支えなければ面接のようなOB訪問をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」とお願いした。OB訪問をプチ面接にしてもらったのだ。面接官はもちろんその企業の社員の方が担当されることを考えれば、私自身このプチ面接を通して面接経験値を大幅に上げたと思う。

 ただし社員の方々にお忙しい中、貴重なお時間をいただくのでエントリーシートが発表されていればその下書きを、それがなくても志望動機やその業界における代表的な質問に対しての自分の意見をしっかり文章にしてまとめていくのは必須である。私の経験から、この文章を渡したときにまず社員の方の目の色がはっきりと変わる。こちらの本気の気持ちを感じていただくことで、向こうからもしっかりとした本気が返ってくるのだ。最後に感想を頂いて、次のOB訪問や本番の面接に活かすことも当然忘れない。


出版・広告など全て営業職で受験

 ここからマスコミ各社の選考に触れていく。

@テレビ(テレ朝・テレ東/1次面接不通過、TBS・フジ/ES不通過)

 テレビの選考で感じたことは、テレビは特にマスコミの中でも求めている人材の次元が違うということ。それとやはり本気でマスコミを目指し、しっかり努力をしている学生の数は少ないということ。倍率を単純にエントリーした人数に対する内定者の割合と考えればそれは途方もない数字だが、私自身テレビは違うなとは思っていた。でもテレビの選考や特に面接で話を聞いていただく機会など一生にそうないのでいい経験になると思った。正直本気度は低かったのだが、やはりというべきか、案の定落ちた。

A新聞(朝日新聞/2次面接辞退、日刊スポーツ新聞社/2次面接辞退、スポニチ・報知新聞社/エントリーシート通過後辞退)

 朝日新聞社は営業職で受けたのだが、自分の中でやりたいことがはっきりとしていたのでしっかりとした面接が出来た。印象に残っている質問は「いろいろな企業や業界を志望していますが、全ての会社から内定をいただいたらどうしますか?」。それに対して、「就職活動というせっかくの機会にいろいろな企業の方のお話を伺ったりする中で、それぞれの企業でやりたいことが見つかっているというのが正直な気持ちです。ただその中で、先ほど申し上げましたとおり朝日新聞社で私がやりたいことも本当の気持ちです」と正直に伝えた。

 面接の段階にもよると思うが、答えそのものよりも大事なのは面接官をいかに納得させるかではないか。ウソの言葉に説得する力はこもらないと思うし、やはり面接官という幾度もの修羅場をくぐってきた社員の方々は百戦錬磨だと感じた。記者職で応募したスポーツ新聞社に関しても自分なりにしっかり追いたい選手やその理由、紙面に創設したいコーナーと狙いなどをいくつか用意していたので、面接官の方に非常に納得してもらい通過させていただいたと思う。

B出版(講談社/筆記試験不通過、小学館/2次面接辞退、集英社/2次面接辞退)

 全て営業職で受ける。出版社に関してはエントリーシート、筆記試験、面接全てが曲者であり大きな山。ただやはり本気の学生の絶対数はエントリー数よりかなり少ないと思っていいし、社員の方もそうおっしゃっていた。

 まず講談社に関してはエントリーシートを仕上げるのが大変であり、その質問や筆記試験の問題が非常に特異。特に筆記試験は何を勉強すれば解けるのか分からないくらい難解。

 小学館に関してはOB訪問がきっかけで途中辞退。元々出版は広告以上に志望度が高かったのだがOB訪問の時に感じた職場の雰囲気と実際に聞いた仕事内容のギャップがあまりにも大きく、第一志望の博報堂の選考が進んでいたこともあって辞退した。

 集英社に関しては最後まで迷ったのだが、入社しても必ずしも希望するコミックの広告に関われるわけではない集英社より、どんな形でも広告に関われる博報堂を選ぶ。集英社に関しては筆記試験は普通のSPIと素直な雑学問題対策をすれば事足りる。確実に差がつき、難易度は高くないものの問題量が多い漢字はしっかり点数を取っておきたい。面接に関しても事前の面接カードからの質問が多く、入社後に具体的にどんなことをやりたいかという質問の比重が大きかった気がする。

C広告(博報堂/内定、電通/1次面接辞退、ADK/2次面接辞退)

 全て営業職。実は元々は広告を志望していなかった。いろいろな業界の方の話を聞くことをテーマにしていたなかで、たまたま博報堂の説明会で聞いた話が非常に興味深かった。就職活動に感じたやりがいが、実は広告会社の中にあるように感じたからだ。

 就職活動を通して、自分という人間力を企業や面接官にどの言葉でどのように表現するか。よく自分を商品だと思って企業に売り込むと言われるが、それがクライアントと生活者の間に立つ広告会社の役割なのではないかと感じたからだ。ただもちろんそれだけでは志望動機としては弱く、自分なりに「広告とは何か」をつめてOB訪問で話を聞いてもらい、最終的に広告会社が第一志望になった。

 選考に関して。まず博報堂に関しては例年通り『マス読』に書かれている内容と大差はなかった。ただ筆記試験が一番最初に行われたのが変更された部分だと思う。質問では、電通ではなく何故博報堂なのかについてつっこまれた。各選考の段階で、特に横浜で大きな会場を借りきった筆記試験ではここから100人前後しか内定出来ないのかと考えると絶望すら感じる受験者数に圧倒された。しかし前述したとおり実際に本気で準備し受験してきている学生は多くない。数に圧倒されることなく、自分と他の学生の戦いでなく自分と博報堂との戦いなのだという意識を強く持った。

 またADKの選考では1次は学生3対社員2のグループ面接があり、「今若者にビールが売れていないんだけど、あなたならどう売りますか?」という質問や「自分と合わなかったり、嫌いなタイプの人間と仕事をしなけばいけない時にどうしますか?」と聞かれたり、面接の最後に「今までの面接の受け答えなどから、私たちに隣の学生を紹介してください」という質問があった。ADKは面接の雰囲気も良く、質問の内容もお決まりのものでなく一番面白い面接だった。


広告業界志望者へのアドバイス

 最後に、広告業界を志望する学生へ。まず志望動機や何故自分が広告なのか、自分にとっての広告とは何なのかをじっくりしっかり考えてほしい。また業界を絞らずに是非就職活動という機会をフルに活用して、いろいろな企業の方のお話を聞き、また自分の話を聞いてもらうことで成長してほしい。そしていざ広告会社を選ぶ時に自分が何を重視するのかを熟考して欲しい。それが仕事の幅でもいいし、給料でもかまわない。

 ただ、特に社風に関しては電通と博報堂とADKでかなり違うように感じたので、決していい悪いではなく各個人に「合う」「合わない」があるように思う。入社後にギャップで苦しまないように、また悔いなく就職活動が終わらせられるように是非積極的に一人でも多くの社員の方に会って話を聞き、その社風を感じてみることをお勧めする。


出発点はスポーツ記者になりたいという思い

Fさん/全国紙、通信社内定:
1年間の韓国留学を終えた大学4年の1月に、就職活動を始めた。しかし、なかなか気持ちを切り替えられず、しばらくは久々に会う友人たちと遊んでばかりいた。

新聞か出版か放送か思い悩んだ末に…

Kさん/放送局内定:
1年間の韓国留学を終えた大学4年の1月に、就職活動を始めた。しかし、なかなか気持ちを切り替えられず、しばらくは久々に会う友人たちと遊んでばかりいた。


多浪・既卒就活の末、出版社の編集者に

S君/出版社内定:
浪人時代も長く、いわゆる「マーチ」に届かない私大出身の私は、全国から秀才が集い、かつ高倍率であるメディアの仕事に就くことが果たして可能なのか、という不安があった。

一貫して広告志望だった私の就職活動

Yさん/広告会社内定:
「人のための課題解決がしたい」ただの綺麗ごとかもしれない。でも、これが広告業界を目指した私の心からの本音だった。私は小学生のころ、人と話すことが苦手で内気な自分にコンプレックスを抱いていた。