夜明け前が一番暗い!
目指せ音楽・芸能プロ

Aさん/日芸 出版社、芸能プロ内定


 私は中学生の頃からプロとしてミュージカルや芝居の舞台に立っていた。その経験を通しマスコミで働く沢山の人達と触れあっていくうちに、彼らのもの作りに対する情熱や、何かをゼロから生み出すパワーに強い刺激を受け、いつの日か私も「作る側」の人間として人に感動や夢を与えるような仕事がしたいと思ってきた。就職超氷河期と言われる中「夜明け前が一番暗い」そんな言葉を信じ、「夢」を「仕事」にする為に、日の出を信じ、駆け抜けた怒涛の半年間をここに綴ってみたいと思う。

動揺、感動、開き直りのTV面接

 2月2日日本テレピ1次面接。緊張という文字をまるで知らない私は、一人で喋りまくる。そんな私とは対照的に、隣の人の声が、がたがた震えていたのが印象的だった。
 2月16日フジテレビー次面接。まるでコンサート会場かと思うほどの人の多さと熱気に圧倒される。おまけに一緒に面接を受けた人がいきなり「僕のいとこは犯罪者なんですう!」なんて意味不明の事を口走り、面接官と共に動揺……。落ちたのは君のせいだー。彼の隣に並んでしまったドジな自分を少し恨む。
 2月17日目本テレビ2次面接。完全に疲れきって、横座りをしてにこりともしない感じの悪ーい面接官にむっとしてしまい、まともな返事が出せなかった。初めての失敗に落ち込んで、少し遠回りして家に帰る。去年は気にもとめなかったリクルートスーツの学生がやたら目にとまる。皆疲れた顔をしてるなー。
 3月16日ニッポン放送1次面接。面接官が私の舞台を見たことがあったらしく、偶然の出会いにお互い大盛り上がり。運命の糸ってあるもんだ。神様ありがとー。
 3月19日ニッボン放送2次面接。報道についての難しい質間に動揺する一緒に受けた学生さん。私は何て答えようかと真剣に考えていたら面接官に「君は間違えても報道は無いからいいや。ははは」と順番を飛ばされる。そんなー。思わず、「ちょっと私にも聞いて下さい!」と頼まれてもいないのに無理矢理、報道について熱ーく語る。苦笑いの面接官が印象的だった。面接は楽しんだもん勝ちだ!と根拠も無い自信が生まれる……。
 同日テレビ東京1次面接。ニッポン放送からダッシュでテレ東へ。こうなると食事する暇もない。就活は体力勝負だ! エントリーシートにMacで作ったグラフィックを貼っておいたら「これほんとに君が作ったのー?」と疑われる。一生懸命作ったのに……。就職活動中は心が弱ってるのでちょっとした一言でとても傷付く。
 3月20日ニッポン放送筆記試験。咋日あんなに頑張ったのに……。やむをえない事情により、泣く泣く辞退。さよならお台場。今度はデートで来てやるわ!
 3月26日テレビ東京筆記試験。政治経済から芸能まで。半分以上白紙状態。自分の勉強不足を思い知らされる。もっと新聞を読んでおけば良かった。反省、反省。もちろん結果は×。
 4月5日テレビ朝日1次面接。凄く感じのいい面接官2人。私の話にやたら共感してくるわ「うちに入ったらその夢実現してねー」なんて言うもんだからすっかり合格のつもりで、うかれて六本木でお茶をして帰ったのに電話は鳴らなかった。感触はあてにならないと実感。
 4月12日。インターピジョン1次面接、筆記試験。自己PRできる格好で来て下さいと言われていたので、お気に入りのオレンジのセーターを着ていった私。ところが周りは皆スーツ。あちゃーまたやっちゃったと自己嫌悪に陥る。筆記試験は算数1間と絵を見てストーリーを作るものと、あるキーワードを一つ選びそれを英語で説明するもの。英語が全く駄目な私はプレイステーションを選び4コママンガでごまかす。が、謎の通過。
 4月22日avex筆記試験。ZEPP東京でTRFの音楽をバックに初めてSPIを受ける。あまりの数学のできなさ具合に傍然。よく高校卒業できたな……。試験の最後に10秒で魚の絵をかいて下さいと言われる。イラストが得意な私。ラッキーなはずが、何故かでかでかと、岩場にたたずむふんどし姿のおっちゃんをかいてしまう。しかし、また謎の通過。ありがとう! おっちゃん。
 4月23日インターピジョン2次面接。すでに部長クラスの面接官が勢ぞろい。「うちの会社の印象は? 正直に答えて」の面接官の言葉に「ドラマに出てくるみたいな会社ですね!」あまりの中身のない答えに苦笑いする面接官。正直者はバカを見る……。しかし、またまた謎の通過。
 5月8日電通筆記試験。あまりの人の多さに動揺。隣に座った東大生のあまりの間題を解く早さに動揺。一夜漬けの勉強のかいあって、苦手の数学もなんとか解けたはずが無念の敗退。やっぱり人間積み重ねが大切だと思い知らされる。
 5月11日ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)1次面接。部屋に入るなりいきなり「面白い話して」と言われる。やたらテンションの高かった私は機関銃のように喋りまくるが、恐いぐらいノリのいい面接官と終始大爆笑。全部こんな面接だったらいいのにな。
 5月12日アミューズ説明会。渋谷公会堂での会社説明会。爆風スランプが出てきて猿岩石に送った応援歌を熱く歌ってくれたり、新人アーティストがライブをしたり、リオのカーニバルが受付にいたりと、とにかく楽しい説明会だった。さすが、エンターテインメントのプロだ! と感心、感動。
 5月13日墓東京FM1次面接。本当に真剣に話を聞いてくれる面接官の姿勢に感動。思わず、「こんなに言いたい事の言えた面接は初めてです。最後にお礼を言わせて下さい」と口走り、涙ぐむ。疲れきった心と身体に優しさが染み渡った。

悔しさのあまり地下鉄で大泣き

 5月13日インタービジョン最終面接。「女の子の営業はいらないんだよね」「にこにこ笑ってればお仕事とれると思ってるでしょ」まるでドラマの台詞みたいな発言の連続に悔しさがこみ上げてきたがぐっとこらえて、「こうみえても根性と体力あります。腹筋6つに割れてます!」と叫ぶ。この発言に面接官一同大爆笑。悔しさのあまり、帰りの地下鉄で大泣きをしていると、外人のビジネスマンがガムを私に渡してこう言ってくれた。”Do not worry. Tomorrow is another day.”そうだ、明日には明日の風が吹く! 泣いていないで前に進もう! 挫折を繰り返しながら少しずつ強くなっていく自分を感じた出来事だった。
 しかし、結果は不合格。あまりのショックに気管を壊し、体重も4キロ減る。心身ともに弱りきっていた私。しかし、家族や友達、彼の優しさに支えられ、もう一度歩き出すことに。ここで諦めたら負け犬だと自分に言い聞かせる。夜明けはもうすぐのはず、夜明けを信じてもう少し頑張ろう。
 5月17日SME筆記。知能テストと作文「初めての興奮」。本当に大興奮しながら作文を書く。
 5月18日東京FM筆記、ディスカッション。恐ろしい量の筆記試験。おまけに、ディスカッションでは、恐ろしいぐらい他の学生さんと話が噛み合わなくて情熱も空回り。無念の敗退。
 5月20日avexPR大会。ベルファーレで黒服のお兄様に見守られながら一人ずつPRをする。水着になる人や楽器を吹く人歌う人など本当に色々な人がいた。私はスーツで踊りまくった。が、久しぶりに踊った為に腰を傷める。体をはって就職活動してるなーとあらためて痛感。
 5月28日SME2次面接。もうすでに役員らしき人達が8人勢ぞろい。「最近泣いたことは?」の質問に、ガムをくれたビジネスマンの話をしたら、面接官が「くー外人はやることが違うねー」と大興奮。前回と同じく終始笑いが絶えずに盛り上がったが、またまた無念の敗退。毎日、泣いてばかりで、体重は減るばかり。いったい、何がいけないんだろう? ゴールの見えない就職活動の不安が極限に達する。本当に就職できるのだろうか。
 6月8日avex1次面接「20年後のaveXでの自分の姿は?」の質問に答えたら、「君の夢ってちっぽけだね」と鼻で笑われる。負けずに「はい!私の夢ってちっぽけなんです」と答えたら、露骨に嫌な顔をされた。またやっちゃったと思ったら、何故か通過。運が少し向いてきたかも。
 6月9日アミューズ筆記試験、1次面接。電通より難しいSPIにちんぷんかんぷん。面接官はとにかく終始笑顔でよく話を聞いてくれた。でも、あの筆記じゃね…。と思ったら、奇跡の通過。夜明け前は近いかも、きっと今は午前5時くらい。そう思ったら少し元気が出て、食欲も出てきた。
 6月16日avex最終面接。よく映画に出てくるよう会議室での面接。逆光で役員の顔がよく見えず、シルエットになっていて、異常に威圧感があった。質問は3、4個でほぼ印象面接といった感じだった。ここまできたら運を天に任せるしかない。早くぐっすり寝たいなー。が、また最終落ち。もう立ちなおれないくらい落ち込む。一日中涙が止まらなかった。もう、就職活動はやめよう。そう決心した時にタイミングよくアミューズから通過の知らせが届く。もう少し、もう少しだけ頑張ってみよう。目を腫らしながらもまた歩き出す。
 6月26日アミューズ2次面接。とにかくよく話を聞いてくれた。一人の学生が持ってきた企画書を制作部に渡しとくねと受け取っていた。真剣に話を聞いてくれる会社だとこちらも真剣に話がしやすい。最後の砦だと自分に言い聞かせ、とにかく一生懸命、熱く、夢について語った。
 7月8日アミューズ3次面接。面接官3人に対して学生13人の面接。「好きなこと喋って」という面接の方法に少し戸惑うが、とにかく個性的な学生ばかりで、ずっと笑い声が絶えなかった。
 7月13日アミューズ役員面接。ついにここまで来た。とにかく思いのたけを語ったらいきなり、会長に「よし!君は採用だ!」と叫ばれる。他の12人の学生と共に私もかなり動揺する。この言葉を信じていいのかどうか…。信じたい自分と傷付きたくない自分が入り乱れ複雑な心境に。これが、夢じゃありませんように!
 7月後半、某出版社から内定を貰う。あまりの嬉しさに、みなとみらい21中をスキップして回り筋肉痛になる。4ヵ月ぶりに何も考えずにぐっすり眠ることができた。諦めようとすると後ろ髪を引っ張られ……。まだ、天には見放されてないようだ。よし、もう少し、もう少し前を向いて頑張ろう。
 8月7日アミューズ最終面接、食事会。ただの食事会かと思ったら、その前にみっちり2時間面接が。今までの集大成だと自分に言い聞かせ、気合いを入れ面接に臨んだ。音楽やラジオ、BS、映画のことなど、色々なことを皆でわいわい話し合い、本当に楽しい面接だった。面接の後の食事会ではじゃんけんで席決めをして、私が何故か上座に。かしこまった雰囲気はまるでなくとにかく笑いの絶えない食事会だった。食事会の後、新人アーティストのライブに招待してもらい、他の学生さん達と大いに盛り上がる。やっぱり生の音楽っていいなー。

多摩川の土手で大泣き「やったぞー」

 8月8日運命の電話がなる。多摩川の土手で友達と共に打ち上がる。目の前には花火があがり、私を祝福してるようだった。あまりの嬉しさと、解放感に、川に向って「おーい、やったぞー」とダサイことを大声で叫ぶ。勢いで、川に飛び込もうとする私を必死でとめる友達の腕の中で大声をあげて泣いた。やったー。夢への切符をついに手にした! 就職活動をして本当によかった。就活を終えた今、痛感しています。落ちたり、受かったり、気持ちのアップダウンが激しくて毎日のように泣いてばかりだったけれど、今までの人生でこんなにも自分と真剣に向き合ったことはありませんでした。努力が直接結果に結びつかない場合もあること、自分は沢山の人に支えられていること。それをあらためて感じることができたのは私にとって大きな、大きな財産です。
 「就職はゴールではない。人生のスタートラインに立つ準備が出来ただけだ」
 今私は自分にこう言い聞かせ、4月1日からの新しい毎日を不安と期待で一杯ながらも心待ちにしています。どんなに寒い夜でも、暗い夜でも、必ず朝は来ます。輝かしい日の出を信じ、決して諦めず、妥協せず、夢に向かって突っ走って下さい! 応援してます!
 泣いてばかりの私を最後まで見捨てず、支えてくれ、守ってくれた家族、友達、そして彼に心からの感謝を込めて……。


出発点はスポーツ記者になりたいという思い

Fさん/全国紙、通信社内定:
1年間の韓国留学を終えた大学4年の1月に、就職活動を始めた。しかし、なかなか気持ちを切り替えられず、しばらくは久々に会う友人たちと遊んでばかりいた。

新聞か出版か放送か思い悩んだ末に…

Kさん/放送局内定:
1年間の韓国留学を終えた大学4年の1月に、就職活動を始めた。しかし、なかなか気持ちを切り替えられず、しばらくは久々に会う友人たちと遊んでばかりいた。


多浪・既卒就活の末、出版社の編集者に

S君/出版社内定:
浪人時代も長く、いわゆる「マーチ」に届かない私大出身の私は、全国から秀才が集い、かつ高倍率であるメディアの仕事に就くことが果たして可能なのか、という不安があった。

一貫して広告志望だった私の就職活動

Yさん/広告会社内定:
「人のための課題解決がしたい」ただの綺麗ごとかもしれない。でも、これが広告業界を目指した私の心からの本音だった。私は小学生のころ、人と話すことが苦手で内気な自分にコンプレックスを抱いていた。