月刊「創」ブログ
森達也さんの『A3』 をめぐる激しい応酬について
森達也さんの『A3』が2011年9月に講談社ノンフィクション賞 を受賞して以降、滝本太郎弁護士及び青沼陽一郎さんと、森さんの間で、激しい論戦が続いている。青沼さんは専用のブログを設けており、森さんも『創』誌面のほかに自身のブログでも反論を行っている。『創』に掲載された森さんの記事もブログで公開している。
最大の論点は、滝本さんや青沼さんが講談社ノンフィクション賞を授賞した講談社に抗議した文書にある通り、地下鉄サリン事件における麻原元教祖の主導権をめぐる問題だ。青沼さんたちは『A3』が「弟子の暴走」論を展開し、麻原元教祖を免罪していると批判するのだが、森さんは「麻原は(サリン散布の)指示をした」と何度も書いていると反論している。
事態をややこしくしているのは、やはり感情に支配される部分があるからだろう。『A3』に対する抗議には、ノンフィクション賞を授与した講談社に抗議するとか、森さんのコメントを掲載した新聞社に抗議メールを送りつけるといった、言論による批判の枠を超えているようなやり方も行われているようだ。
また、元オウム信者の平田信容疑者逮捕の時に滝本弁護士に取材を申し込んだところ、「森さんを重用しているメディアだから」という理由で断られた。滝本さんは以前、創出版刊『ドキュメントオウム真理教』にも登場いただいていたのだが、この取材拒否には驚いた。
講談社ノンフィクション賞が授与された2011年9月に、『創』は、滝本弁護士に森さんとの対論を呼び掛けたのだが、この経緯についても当初誤解が生じた。その経緯については『創』ブログの2011年9月7日付と9日付をご覧いただきたい。こういう行き違いは往々にしてあるものだが、そうしたことについて感情的になってしまうと、肝心の話は前へ進まなくなってしまう。幸い、この時の経緯については、滝本弁護士も一応納得してくれたと思っていたのだが、その後、青沼さんのブログで再びこの問題が持ち出されている。
『創』も森さんの手先だという感じの非難をされているようなので、『創』がこう言っても説得力はないのかもしれないが、もう少し実りある論争になるよう、手立てはないものかと思う。
(『創』編集長・篠田博之)
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